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 渋井真帆(しぶいまほ)
http://www.womanf.co.jp  info@womanf.co.jp
 マネー&キャリアアドバイザー、(株)マチュアライフ研究所 代表取締役社長。 金融機関や新聞社への販売・マーケティングコンサルティングの他、講演、セミナー、雑誌等への監修・執筆を中心にマネー・ リテラシーやビジネス・リテラシーの普及活動を展開中。男子禁制の「skill for life」スクール、「女のたしなみマネー塾」や 「女のたしなみ やわキャリ塾」は全国から申し込みが殺到するほどの盛況ぶり。著書に「女(わたし)を磨くマネー塾」(三笠書房) 、「あなたを変える『稼ぎ力』養成講座 決算書読みこなし編」(ダイヤモンド社)がある。

第3回
企業が求めているのは「精鋭人材」

11月○日。都内千代田区某社本社ビル内。

MAHO:A部長、ご無沙汰しております。
A部長:やあ!雑誌や新聞の記事で拝見しているよ。ご活躍なによりだねえ。
MAHO:おかげさまで何とかやっております。
A部長:今日はわざわざお越しいただいて済まないねえ。もう話は済んだの?
MAHO:はい。○○課長さんとのお話は済みました。
A部長:そうですか。それでは来期もよろしく頼みますよ。
MAHO:ありがとうございます!精一杯やらせていただきます。ところで、A部長に折り入ってお願いがあるのですが。
A部長:ウン?何だい。
MAHO:御社は学生の就職人気ランキングで例年上位の人気を誇っていらっしゃると記憶しております。
A部長:おかげさまでね。今年も就職戦線は厳しそうだね。私も昔採用活動に携わったことがあるよ…いつだったけなあ?なあ、B君。

まずい。このままではA部長の昔語りが始まってしまいます。こうなったら、もう誰も止められません。ここは何とか自分のペースに巻き込まなければ!!

MAHO:ええー!?A部長は学生の採用活動に携わったことがあるのですか?それはお気の毒。私、学生大嫌いなんです。
A部長:また渋井さんの大嫌いがはじまったね。渋井さんはあといくつ「大嫌い」があるのかな?

やった!何とかA部長の気持ちを昔語りから逸らすことができました。

MAHO:A部長、渋井の悲劇を聞いてくださいよ!私学生がとにかく嫌いなんです。
A部長:ほほう。なぜかね?
MAHO:学生って、自分たちが何かしてもらうのは当たり前だと思っているじゃないですか。例えば、企業が説明会開くのだって当たり前、こちらが質問に応えるのだって当たり前。まったく、ビジネスパーソンにとって「時は金なり」だっていうんです。自分たちのために大切な時間を割いてもらっていることが理解できない。説明会だってコストかかっているのにそれだって気がつかない。何かしてもらうのが当たり前だから気も利かない。
A部長:おいおい、相変わらず毒舌だねえ。渋井さんだってほんの数年前は学生だったじゃないか。
MAHO:はい。かなりずうずうしい学生だったと思います。
A部長:それは言わなくても分かるよ(笑)。で、悲劇っていうのは何なの?
MAHO:そんな学生嫌いの私が、最近就職セミナーをするようになったんです。
A部長:それは悲劇だねえ。

A部長はニヤニヤしています。鋭い方ですから、こちらの意図が半分分かっているのでしょう。

MAHO:セミナーだけではなく、「女のたしなみ就職塾〜女子学生編」なんている連載もすることになってしまったんです。
A部長:なんだい。嫌い嫌いも好きのうちってヤツじゃないのかい?
MAHO:そんな突っ込まないでください。困っているのですから。
A部長:困っているって?それは大変だ。何に困っているんだい。力になるよ。

いわゆる歴史ある大手企業で偉くなる人は、たいてい人情に厚い方が多いです。こちらが「困っている。相談に乗って欲しい」と言って、ムゲにする方はほとんどいません。

MAHO:勉強しようと就職本を読んだんです。そうしたら、「なんじゃいコレ?」みたいなことばかり書いてあって。この通 りにやったら、受かるものも落ちるよ!って言いたくなるようなシロモノばかり。
B課長:本当に就職本は困りものです。

あれれ?それまで脇で黙ってMAHOと部長のやりとりを聞いていたB課長(男性。38歳?)が語気を強めてイキナリ発言です。

B課長:あの就職本のせいで、自分たちはどれだけ寝不足を強いられているか。就職本に載っている通 りの反応をしている学生は、すぐに落としますよ。
MAHO:何だかB課長、リアリティがあり過ぎておかしいです(笑)。
A部長:B君はウチの採用活動の責任者のひとりでもあるんだよ。
MAHO:ええ〜?!B課長リクルーターやるんですか?なぜ?御部って御社の精鋭中の精鋭が集まっている部じゃないですか?その部の課長さんがなんで学生の採用活動なんて携わるんですか?MBAがもったいないですよ。
A部長:今や企業の採用活動もそれだけ変わったということだよ。今やわが社をはじめ、日本の多くの企業がかつてないほどの競争にさらされている。その競争に打ち勝つために合理化をすすめようやく業績も好転しはじめた。とはいえ、油断はできない。ビジネスの環境もまたかつてないスピードで変化するからね。

MAHOもB課長もウンウンとうなずいて聞きます。上司の演説にはただ聞いているだけではお仕事人失格です。「いかにも興味を持っています」という態度で聞くことが大切。

A部長:ひとつの会社が成功できるかどうかは、かつてないほど雇う人材の質に左右される。我々が求めているのは、ただの従業員ではない。精鋭な人材、早期に人財になりうる人材なのです。
MAHO:なるほど。精鋭人材を選ぶには精鋭人材を採用活動に当たらせなければならないというわけですね。B課長、大変ですね。採用までするとなると、もうB課長って社内起業家並みのバライエティに富んだ仕事を抱えることになりますよ。
A部長:B君は将来わが社を担う人財のひとりだからね。トップマネジメントになることを期待されている人間はさまざまな経験をしたほうがいい。

このご時世でも収益を伸ばしている企業では、エリート創生に取り組んでいるところが多いと聞いているが、やはりこの会社もそうなのか…。日本も大企業に関していえば、いよいよ米国型に近づいているのかも知れません。

MAHO:けれどB課長は女子のほうの採用はノータッチでしょう?
B課長:そんなことはないですよ。弊社は女性の戦力化にも力を入れつつありますから。女子学生に関しても精鋭人材を求めます。
MAHO:愚問で恐縮なのですが、B課長のいう『精鋭人材』って何ですか?大学の成績がオールAの人?それとも会計士とか税理士の資格を学生のうちから取得している人?それとも国体で優勝した経験のある人?それとも英語力やPC力など特別 なスキルを持っている人ですか?
B課長:渋井さんはそのことが聞きたかったのですね。電話で済む話なのになぜわざわざお越しいただいたのだろうと思っていたのですよ。
MAHO:すみません。実はその通りです。でも、A部長とB課長のお顔も久しぶりに拝見したいなあ〜と思ってうかがったのですよ。

我ながらリップサービス力がUPしたものです。けれど、女性のリップサービスがビジネスの場での潤滑油になるのは確か。B課長は「お約束通 りですね!」と言わんばかりの微笑を見せただけですが、A部長は鷹揚な方なので本気にしています。

A部長:いいじゃないか、B君。私も君の意見を拝聴したいよ。
B課長:そうですか。じゃあ、少しだけお話させていただきます。

ウ〜ン!さすがA部長。ナイスミドルは話が分かる!

B課長:精鋭人材といっても、大学の成績は必ずしも重視されません。といっても、良ければいいにこしたことはありませんが。われわれは、専門的で論理的なことはよく知っている反面 、その知識を実地に応用する能力がきわめてとぼしいインテリには懲りごりしています。
MAHO:御社にも資格オタク?って突っ込みたくなる社員さんがたくさんいるんですか?いくら資格たくさん持っていても、稼げるかといえばそうでもないんですよね。
B課長:その通り。そのうえ近頃の業務は非常に専門化しているため新人が即戦力になるのは不可能に近いです。企業はそのことを学習しています。だから企業が学生に求めるのは、新しい仕事の技術的な側面 を学習する能力や意欲があるかどうかです。
MAHO:それは、『職業意識』に該当する話ではないのですか?
B課長:その表現は正しいと思います。企業はこれまで上司の言う通 りに動く、つまり「考えない人」を求めてきた。けれど今や企業が欲しいのは能動的に仕事をする人間です。それには職業人としての意識、すなわち「職業意識」を兼ね備えていなければムリです。けれど専門的な方法論よりも教えるのが難しいのが職業意識です。
MAHO:精鋭人材というより、精鋭人材候補を求めているということなのですね。確かに、『職業意識』、すなわち仕事人としての心構えができていない人はいくら教育を施しても精鋭人材にはなれませんものね。
B課長:新卒の採用とビジネスパーソンとしての経験を持っている人相手の中途採用は以って非なるものですからね。だけど中途採用だったら職業意識が低かったらなおさらまずいでしょう。
MAHO:ビジネスパーソンとしての経験が皆無の学生がする就職活動というのは、面 接やエントリーシートの提出など一連のプロセスを通して自分には『職業意識』が備わっているとアピールすることに他ならないのですね。
B課長:全くその通り。けれど就職本というテクニック本が巷に流通 しているせいで、肝心の『職業意識』を深めてくる学生の数は本当に少ないんですよ!渋井さん、何とか言ってやってくださいよ。

 職業意識、すなわち仕事人、すなわちプロとしてのスタイルが身についているかどうかを見られるのが就職活動。就職活動に励む女子学生の皆さん!この言葉の意味が本質的に理解できたとき、あなたは必ずや内定を手に入れるでしょう。それだけ大きなヒントです。 次回はB課長に職業意識についてもう少し突っ込んでみたいと思います。



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